夏に向けて、自然が生命力にあふれる姿を見ることができます。また一般には衣替えもあり学生たちが夏服に変わる時です。その姿を見て、夏を感じる方も多いのではないでしょうか? この記事では、二十四節気の「小満」について解説します。
二十四節気・小満とは、万物が次第に成長し草木が茂る節気のこと
新緑が目立ち、動植物の生命の息吹を感じる爽やかな季節を迎えます。小満(しょうまん)は、春のやわらかな陽ざしが暖かく地に降り注ぎ、万物がすくすくと育ち始める二十四節気の一つです。小満の頃になると、緑が一層深まり、木々や草花が勢いよく葉を茂らせ、山々も豊かな緑で彩られていきます。この節気は5月21日頃から6月5日頃まで続き、いよいよ初夏の訪れを感じられる季節です。
小満(しょうまん)を簡単にいうと、万物が次第に成長し、草木が茂る節気のことです。
二十四節気のひとつで、暦の上で夏が本格的に始まる直前の時期を指します。毎年5月21日頃から6月5日頃までの間で、この時期は、草木が繁り、田畑の作物もすくすくと成長する季節です。
「小満」という名前には、「少し満ちる」「少し実り始める」といった意味が込められています。これは、田んぼの苗が青々と育ち始め、作物に少しずつ成長の兆しが見え始める時季を指しています。農家の人々にとっても、小満は大地の恵みに感謝し、収穫へと続くこれからの成長を見守る大切なひとときにちがいありません。
また、この時期はさわやかな風が吹き、穏やかな陽気が心地よく感じられる日が増えてきますよね。日差しが少しずつ強くなり、夏への期待が膨らむ頃。わたしたちの心にも、これから迎える夏を前に、自然の力強さや安らぎを感じさせてくれる季節の節目のようなものが小満なのかもしれません。
二十四節気(にじゅうしせっき)は、太陽の動きに基づいた中国起源の暦です。1年を24等分し、各節気は約15日間隔で巡ります。節気には、気候の特徴や農作業の目安が示され、自然のリズムを感じながら生活をする知恵が伝わっています。
小満の期間に含まれる七十二候とは?
小満の期間には、三つの七十二候があります。七十二候とは、季節をさらに細かく分けたもので、それぞれの時期に自然界で起こることを表しています。
- 初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
- 期間:5月21日頃から5月25日頃
- 意味:蚕が桑の葉を盛んに食べ始める時期です。養蚕農家にとっては忙しい季節です。
- 次候:紅花栄(べにばなさかう)
- 期間:5月26日頃から5月30日頃
- 紅花が盛んに咲く時期です。紅花は染料や薬用として古くから利用されてきました。
- 末候:麦秋至(むぎのときいたる)
期間:5月31日頃から6月5日頃
意味:秋に種を蒔いた麦が収穫の時期を迎えます。畑では麦の穂が黄金色に輝きます。
この麦の収穫により麦農家さんはちょっと満足できる、小さな満足が得られる…。小満とは、そんなことからいわれたという説もあります。
七十二候は季節の微妙な移り変わりを表し、自然のリズムを感じることができる日本独特の文化です。詳しい記事は、下のリンクからどうぞ
初候:蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ) のこの時期は気温が上がり、蚕が活動を再開し、盛んに桑の葉を食べるようになることから、古くから養蚕業が盛んな日本の農家にとって、蚕を育てる大切な季節の到来を告げる合図とされてきました。
宮中や地域では、養蚕や絹に関する神事が古くから行われており、これは日本の農業や織物文化に深く結びついています。蚕の神事は、蚕の健康と絹糸の豊作を祈る儀式で、「御養蚕始儀(ごようさんしぎ)」がその代表的なものです。
御養蚕始儀(ごようさんしぎ)は、皇室が養蚕を通じて絹の生産を象徴的に支援する伝統的な行事です。この神事は春先から夏にかけて行われ、蚕が健やかに育ち、豊かな糸が得られることを願います。この儀式は明治時代以降に再開され、現代でも毎年行われています。天皇や皇后が蚕の成長を見守り、桑の葉を与えたり、繭を取る工程に関わることで、蚕糸業の発展を象徴的に支援しています。
次候:紅花栄(べにばなさかう) にもあるように、このころは紅花が咲き始める時期です。特に日本では山形県などで紅花畑が広がり、その美しさを楽しむことができます。
紅花の歴史は古代文明にまでさかのぼります。
紅花の起源は西アジアの一帯とされており、古代のエジプトや古代ローマ、ギリシャなどでも染料や香料として広く使われてきました。エジプトでは、墓から出土した絹織物に紅花染料が使用されていることが確認されています。
こんなにも古い時代から紅花が存在したことにも驚かされますが、その染料の赤い色が残っていたことにも驚かされますよね。日本でも「赤・紅」は魔除けとして古くから使われてきた色です。このサイトでも還暦の記事がありますが、還暦も赤いちゃんちゃんこを送ります。これにも、還暦を迎える方がずっと健康で長生きをしてほしいという願いからです。また、紅花には防虫効果があるため、ミイラの防虫のために使われていたのではないかという説もあります。装飾であれ、防虫であれ、紅花はさまざまな効能を持った植物に違いありません。また最近では日本の紅花が高品質であるということで輸出も増えているということです。
還暦についての記事はこちらから
まとめ
いかがでしたか? 小満は、自然の豊かさを感じながら、夏の訪れを待ち望む時期です。ぜひ、ふと立ち止まって季節の息吹を感じてみてくださいね。季節の風物詩や行事を通じて、日本の伝統文化に触れながら、心地よい季節を楽しみませんか?
次回は、芒種(ぼうしゅ)についてご案内します。