秋の虫の声、キンと冷えた空気、そして鮮やかに色づく紅葉… 五感を研ぎ澄まし、秋の深まりを感じるとき、ふと目に留まる草花たち。秋の野山を彩る七草は、古来より日本人に愛されてきました。秋の七草の歴史から、楽しみ方までご紹介します。
秋の七草の名前の覚え方、読み方知っていますか?
秋の七草は、お粥にしていただくこともないので、当然、スーパーに並ぶこともなく、あまり知られていないようなきがします。俳句などから秋の七草があることだけは知っていてもいざ名前となると出てこないですよね。
これが秋の七草オールスターズ!
- 萩(はぎ)
- 尾花(おばな)
- 葛(くず)
- 撫子(なでしこ)
- 女郎花(おみなえし)
- 藤袴(ふじばかま)
- 桔梗(ききょう)
なわけですが、春の七草のように、語呂合わせで覚えられないのが、秋の七草です。でも、こういう覚え方もあるんです。
ハスキーなおふくろ
(はぎ・すすき(おばな)・ききょう・なでしこ・おみなえし・ふじばかま・くず・ろ)
お好きな服は?
(おみなえし・すすき(おばな)・ききょう・なでしこ・ふじばかま・くず・はぎ)
本当のところ、秋の七草は尾花ですが、ススキの別名ということで。
秋の七草は、凛とした花々が多い印象です。でも、その魅力は、ただ美しいだけじゃないんです! その知られざる一面と、五感で秋を堪能できる楽しみ方をご紹介しますね。
秋の七草は食べられる? 秋の七草は五感を楽しませるものです
秋の七草は、春の七草のように七草粥にして食べることはありませんが、万葉の昔から、人々は歌に詠み、香を焚きしめ、秋の七草を五感で楽しんでいました。 現代の私たちもその頃のように、忙しい日常を少し離れて、自然と触れ合い、五感を研ぎ澄ませてみませんか?
秋の七草とは?~万葉集の歌が由来~
秋の七草は、山上憶良が詠んだ以下の二首の歌が由来とされています。
・秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花
(秋の野に咲いている花を指折り数えてみると、七種類の花がある)
・萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし) また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお)の花
(萩の花、尾花、葛の花、撫子の花、女郎花、また藤袴、朝顔の花)
一首目は、秋の野原に咲く花を数えてみると七種類あることを歌っています。
そして二首目で、具体的な花の名前を挙げています。
ただし、ここでいう「朝顔の花」は、現在私たちが「朝顔」と呼んでいる花とは異なるという説が有力です。 桔梗や木槿など諸説ありますが、現在では桔梗とする説が有力視されています。
秋の七草をもっと詳しく! ~特徴や開花時期と花言葉~
1. 萩(ハギ)
秋の七草の筆頭として知られる萩は、紅紫色の小さな花をたくさん咲かせます。都内でも、ご自宅のお庭に萩の木があるお宅があるんですよね。目を楽しませてくれます。
- 花の開花時期 7~10月ごろ、1cmほどの赤紫色の花を多数咲かせます。
- 花言葉 「思案」「内気」「柔軟性」ほか。
2. 尾花(オバナ)
尾花は、ススキの別名だとご存知でしたか? どうやら、動物のしっぽに似ているところからこの名がついたそう。子供の頃は、あのフシャフシャ感が、なぜかリッチな気分にさせました。幼心に毛皮のように思ったからかも。映画の情景などでも、秋風に揺れる穂の姿は、秋の風情を感じさせますよね。
- 花の開花時期 8月~10月頃。
- 花言葉 「活力」「勢力」「心が通じる」ほか。
3. 葛(クズ)
葛は、繁殖力が強く他の植物に絡みついて育ち、その根からは葛粉が作られます。葛粉といえば、葛餅にも2種類ありますよね。関西風と関東風。関西風は仕上がりが透明な、本葛粉を水で溶き加熱したもの。関東風は白っぽく固い仕上がりの、浮き粉を発酵させて作ったものです。わたしは箸で持ち上げるとふるふるする、関西風の方が好みです。
- 花の開花時期 8月~9月頃。チョウチョのような形の小さな花を円筒状に咲かせます。
- 花言葉 「芯の強さ」「活力」「治癒」ほか。
4. 撫子(ナデシコ)
撫子は、可憐な花を咲かせることから「大和撫子」の言葉の由来にもなっています。
大和撫子って言葉も、今はほとんど聞かなくなりましたが、以前「やまとなでしこ」というドラマがありました。主役は松嶋菜々子さんでしたが、CA役で当時で言う「3高」ラブコメです。バブル期だった1986~87年の価値観の一つですが、当時は若い女性が結婚相手の男性に求める条件だったんですよ。「高学歴」「高身長」「高収入」を指す言葉で「3高」。モテる男性の条件としてよく聞かれましたが、果たして現在は?
- 花の開花時期 5月~10月頃。4~5cmほどのピンク色の花を咲かせます。
- 花言葉 「純愛」「無邪気」「思慕」ほか。
5. 女郎花(オミナエシ)
女郎花は、小さな黄色い花が集まって咲きます。 乾燥させたものは、生薬としても用いられます。おみなは文字通り女性。えしは、古語で圧を意味するとのこと。すなわち女性を圧倒するほどの美しい花!ということです。
- 花の開花時期 8月~10月頃。
- 花言葉 「美人」「親切」「約束を守る」ほか。
6. 藤袴(フジバカマ)
藤袴は、乾燥させると桜餅のような香りがすることから香料として用いられてきました。こちらも華やかな香りを辺りに振り撒いてくれます。秋だと言うのに、なんで桜餅の香りがするんだろうと思って辺りを見渡すと、必ずそこには、藤袴ありです。
- 花の開花時期 8月~10月頃。
- 花言葉 「遅延」「躊躇」「優しい思い出」ほか。
7. 桔梗(キキョウ)
桔梗は、青紫色の星形の花を咲かせます。 蕾の形が風船のように膨らんでいることから英名では「balloon flower」と呼ばれます。子どもの頃に、つぼみをパンと割るのが面白くて、よくやっては母に叱られました…。
- 花の開花時期 6月~9月頃。
- 花言葉 「永遠の愛」「誠実」「清楚」ほか。
秋の七草の歴史~万葉集から現代まで~
山上憶良が秋の七草を詠んで以来、人々は和歌に詠んだり、絵画の題材にしたりするなど、さまざまな形で秋の七草を楽しんできました。特に、平安時代には、貴族の間で「花合わせ」と呼ばれる、花の姿や香りを競い合う優雅な遊びが流行しました。
現代でも、秋の七草は、生け花や茶花など、私たちの生活の中で楽しまれています。 また、秋の七草は、モチーフとしても人気です。和菓子や工芸品など数多く作られています。
秋の七草をもっと楽しもう!~五感が喜ぶ・現代の楽しみ方~
1. 写真に収めて
秋の七草は、種類によって咲く場所や時期が異なります。 植物園や公園に出かけて、写真に収めてみませんか? 写真を通して、それぞれの植物の特徴や美しさを再発見できるはずです。
庭や野原、公園で咲く七草は、自然の美しさを発見する絶好の機会。スマホでも手軽に撮影でき、加工アプリで作品に仕上げれば、秋の魅力がさらに引き立ちます。インスタグラムで「#秋の七草」をタグ付けして共有すれば、同じ趣味の仲間とつながるチャンスも!
2. 和菓子やお茶で味わって
秋の七草をモチーフにした和菓子やお茶は、見た目にも美しく、秋の訪れを感じさせてくれます。 お茶うけにしたり、贈り物にしたりするのもおすすめです。萩や桔梗を模した美しい練り切りや、ススキをあしらった羊羹など、職人技が光るお菓子が揃っています。
お茶も秋限定のブレンドや風味が楽しめる季節。温かい煎茶や抹茶を合わせて、和菓子とともにゆったりしたひとときを過ごすのも素敵です。お茶会や自宅での小さなティータイムで、秋の深まりを感じてみては?
3. 庭やベランダで育てて
秋の七草の多くは、比較的育てやすい植物です。 庭やベランダで育てれば、日々成長を感じながら、秋を感じることができます。風にそよぐ尾花も風情があります。そのままお月見にも大活躍です。
小さなスペースでも、秋の風情を演出するにはぴったり。藤袴(フジバカマ)や桔梗(キキョウ)は、可憐な花を咲かせてくれるのでお庭やベランダが一気に秋色に染まります。
初心者の方も、園芸店やホームセンターで簡単に手に入る七草から始めてみましょう。育てる楽しみとともに、秋の彩りを日常に取り入れてみませんか?
4. 万葉集の歌に触れて
秋の七草は、日本最古の歌集「万葉集」に由来しています。その美しい歌に触れることで、秋の風情がより深まることでしょう。たとえば、山上憶良の「萩の花、尾花、葛花、なでしこの花…」という歌は、七草を讃える情感豊かな一節。
現代の生活でも、七草にちなんだ歌を読みながら、それぞれの植物が持つ風情や意味に思いを馳せてみては? 和菓子やお茶とともに万葉集を開けば、古の日本の秋が、現代の暮らしにそっと寄り添います。
5. 生け花や押し花にして
秋の七草を使って生け花を楽しんだり、押し花にして保存したりすることで、秋の風情を長く楽しむことができます。萩(ハギ)やススキは生け花の定番。花器に飾るだけで、和の趣が漂います。藤袴(フジバカマ)や桔梗(キキョウ)は、繊細な美しさで部屋を秋らしく彩ってくれるでしょう。
押し花にすれば、七草の美しさを長く楽しむことができます。押し花アートやしおりにアレンジすれば、日々の暮らしに秋の気配を取り入れることが可能です。特別な道具がなくても簡単に始められるので、初心者にもおすすめです。
まとめ
いかがでしたか? あなたも秋の七草を通じて、五感が喜ぶ秋の楽しみ方してみませんか? 秋の七草を知ると、街を歩くときにも自然とその存在を探したくなるものです。ぜひ、五感を研ぎ澄ませながら、秋の深まりを感じ、自分だけの楽しみ方を見つけてみてくださいね。