一年のうちで、空気がもっとも静かに変わる瞬間があります。
それが「立春」です。
まだ寒さは残っているのに、朝の光がすこしだけやわらぎ、
玄関を開けたときの空気が、昨日より軽く感じられることがあります。
立春大吉(りっしゅんだいきち)は、そんな “季節の入口” に貼られる小さな札。
白い紙に、左右対称の四文字が凛と立つその姿は、春を迎えるために門をそっと整える標(しるし)のようでもあります。
節分で冬の気を払い、立春で春の気を迎える。日本の暦は、季節と暮らしの通り道をやさしく整えてくれるのです。
こちらの記事でも立春大吉についてご紹介してます。
立春大吉の意味と由来 ── 門を守り、季節を迎える札
立春大吉は、禅宗の寺院で古くから使われてきたお札です。
特徴は、四文字すべてが左右対称であること。門に貼られたこの文字を邪気が目にすると、振り返ったときにも同じ文字が見えるため、「まだ門を出ていない」と勘違いして戻ってしまう ── そんな伝承が残されています。
この伝承は微笑ましいものですが、お札の本質は「季節を迎える門を整える」という、とても暮らしに根づいたものです。
左右対称の形は、古くから“境目を乱さない図形”として扱われてきました。
門や扉の前に置くことで、内と外の気の流れを整える役割があると考えられていたのです。
つまり立春大吉は、単に邪気を払うだけでなく、
“春の気を迎えるための境界の調整”
を象徴する札だったのです。
SEASONS COLUMN ── 春が近づくと、門はほんの少しひらいていく
立春のころ、玄関の前に立つと、ふっと空気が軽くなる瞬間があります。
風の温度がわずかに変わり、光の粒がやわらかくなり、足元の影が少し薄くなる。こうした小さな変化を、昔の人は季節の兆しとして受けとり、「門を整えて春を迎えよう」と考えました。
門は、外の季節が最初に触れる場所。家の気配がいちばん外とつながる場所でもあります。
だからこそ、立春の日に札を貼るという習慣は、“季節と家をつなぐ優しい橋渡し” のような行為でした。
春は、ある日突然やって来るのではなく、気配となって、玄関先にそっと現れながら近づいてくるのです。
立春大吉のお札の貼り方

- 貼る日:立春の朝
- 場所:玄関の外側、または内側の見える位置
- 準備:白い紙に「立春大吉」と縦書き
- 剥がす時期:翌年の立春(神社に納めることも可能)
節分前から準備しておくのも良いことです。季節の気が切り替わる前に、門がゆっくり整いはじめます。
ちなみにこの立春大吉のお札は、私が昨年作成したものです。
今年はもっとシンプルにしたいなと思っています。
節分で “冬の気を手放す” → 立春で “春の気を迎える”
その流れが、暮らしのリズムを自然と整えてくれます。
立春の日にしたい、小さな迎え入れ ── 春の門をひらくために
以下は、立春の頃におすすめしたい、やさしい「迎え入れの所作」です。
どれも日常の延長でできるものばかりです。
玄関の空気をやわらかく入れ替える
扉を数秒あけるだけで、春の気が通り道を探すように入ってきます。
扉まわりを軽く掃く
冬のあいだ蓄えられていた重たい気が抜け、春の明るい気が入りやすくなります。
朝の光を受け止める
立春の光は、冬とは違ってどこか柔らかい。掌に一度すくうようにして受けると、心の奥がゆるむような静かなあたたかさがあります。
春の香りを迎える
柑橘・ハーブ・白い花など、香りは季節の気を運びます。玄関やリビングに少し置くだけで、空気がふわりと春に近づきます。
春の食材をひとつ取り入れる
菜の花、早春の青菜、豆類など、食は “季節を体に迎える方法”。春色の気がすっと体に入っていきます。
大切なのは、
「春を迎えるための通り道をつくる」という意識です。
まとめ ── 春は、門から静かに訪れる
立春大吉は、豪華な儀式ではありません。白い紙に書かれた四文字が、玄関の気配をそっと整え、新しい季節の入口をつくってくれるだけの、とても静かな祈り行事です。
節分で冬を払い、
立春で春を迎える。
暦の流れに寄り添うだけで、心は自然と軽くなり、暮らしの中に小さな希望が生まれます。春は、門をひらくようにして、そっとやって来るのです。
参照:tenki.jp|立春大吉の季節行事解説 曹洞宗関東管区教化センター|年中行事資料(立春大吉)
