大寒(だいかん)は、二十四節気の24番目にあたり、一年の中で最も寒さが厳しい時季を表します。毎年1月20日頃から2月3日頃までを指し、次の節気である立春に続く冬の締めくくりともいえる時期です。
二十四節気・大寒(だいかん)とは、一年で最も寒さが厳しい時季の節気です
大寒は、農作業の区切りや生活のリズムを整える指標としても重要視され、古くから人々の暮らしに深く根付いてきました。
この時季は、日本列島全体が厳しい寒さに包まれます。冷え込みが最も厳しいため、地面が凍りついたり、川や池に氷が張ったりする風景が見られるでしょう。一方で、この寒さは味噌や日本酒などの寒仕込みや、寒中水泳といった風物詩を生むきっかけともなっています。
大寒の期間に含まれる七十二候とは?
大寒の時期には、三つの七十二候があります。七十二候とは、季節をさらに細かく分けたもので、それぞれの時季に自然界で起こることを表しています。
二十四節気(にじゅうしせっき)は、太陽の動きに基づいた中国起源の暦です。
1年を24等分し、各節気は約15日間隔で巡ります。節気には、気候の特徴や農作業の目安が示され、自然のリズムを感じながら生活をする知恵が伝わっています。
- 初候:鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
- 期間:1月20日頃~1月24日頃
- 意味:鶏が春の訪れを感じ、卵を産み始める頃を表します。冬の寒さの中に、生命の息吹を感じられる時期です。
- 次候:水沢腹堅(さわみずこおりつめる)
- 期間:1月25日頃~1月29日頃
- 意味:沢の水が凍り、氷が張り詰める様子を表しています。冷え込みが一層厳しくなるこの時期ならではの光景です。
- 末候:欄鶯囀(うぐいすなく)
- 期間:1月30日頃~2月3日頃
- 意味:鶯(うぐいす)が美しい声で囀り始める時期です。春の訪れを感じさせる微かな予兆が感じられます。
大寒の風物詩と行事
鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)
鶏始乳の意味
大寒の初候の、「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」は、鶏が春の気配を感じて卵を産み始める様子を指してます。昔から鶏は春の訪れを知らせる生き物として知られており、鶏の産卵が増えることは、冬が終わりに近づいているサインともいえます。
鶏が縁起物とされる理由とは
鶏は、古来より日本や世界中で「縁起物」として大切にされてきました。その理由は、農業や自然との深い結びつき、そして神聖な象徴としての意味を持つことに由来しています。そいいえば、神社でも鶏を放し飼いにしているところもありますよね。ここでは、鶏が縁起物とされる理由をいくつかご紹介します。
1. 鶏は、夜明けを告げる神聖な存在
鶏の鳴き声は、どの国でも、夜明けを知らせる象徴です。太陽が昇るタイミングに合わせて鳴く習性があるため、「新しい始まり」や希望や繁栄をもたらすと考えられてきました。特に日本では、鶏の鳴き声が朝を呼び込むとされ、神聖な動物として神社で飼われることもありました。
2. 鶏は「生命力」を司る存在。「大寒卵」は特に縁起がよいとされています
鶏が卵を産むことは、豊穣や生命の誕生の象徴とされています。特に、大寒の時期に産まれる「大寒卵」は、金運や健康運を引き寄せる縁起物として親しまれています。卵は命の始まりを象徴し、鶏そのものも生命力を司る存在として古くから尊ばれてきました。
大寒卵について詳しくはこの記事をご覧くださいね。
3. 農業との深い結びつき
鶏は、農業の中で害虫を駆除する役割を果たしてきました。また、卵や鶏肉は重要な食料源でもあり、農村生活に欠かせない存在です。このように、生活や生産の象徴である鶏は、自然や人間の営みにとって縁起の良い動物とされています。
4. 干支(えと)での「酉(とり)」の役割
干支の「酉(とり)」は、収穫が終わり収穫物を収めるという意味を持ちます。このため、酉年は収穫や財産が実る年とされ、縁起が良いとされています。また、酒(さけ)の漢字に「酉」が使われることから、祝祭や喜びごとの象徴としても親しまれています。
5. 世界的な文化における鶏の位置づけ
世界各地でも、鶏は幸運を招く動物とされています。例えば、中国では鶏が悪霊を追い払う力があると信じられ、門の装飾などに用いられてきました。また、ヨーロッパでは、鶏は勤勉や目覚めを象徴し、農村部で縁起の良い動物として扱われています。
Seasonal Column 鶏を日常に取り入れるアイデア
鶏や卵を生活の中に取り入れることで、さりげなく縁起を担ぐことができます。例えば、大寒卵を食べることで健康や金運を願ったり、鶏のモチーフのアイテムをキッチンやインテリアに取り入れるだけで、気分が一気に明るくなりますよね。鶏は、私たちの日常に密接に関わっていて、昔から幸運を呼ぶアイテムとして親しまれてきました。その背景を知り、ちょっとした工夫で運気を呼び込む楽しさを感じてみてください。
大寒の行事
寒稽古(かんげいこ)、寒修行(かんしゅぎょう)
寒稽古は、武道や芸道において冬の厳しい寒さの中で鍛錬を行う行事です。特に剣道や柔道、空手などで実施され、心身を鍛え、精神力を高める目的があります。
一方、仏教における修行の一環として、大寒の時期に滝行や川での水行、寒中托鉢(たくはつ)が行われます。厳しい寒さの中で心身を清め、修行の効果を高めるものです。
どちらも寒さに耐えることで自己鍛錬や心の成長を目指す伝統的な行事であり、冬の厳しい気候を逆手に取った修行法として知られています。
寒仕込み
味噌や日本酒の仕込みが行われる時期でもあります。低温でじっくり熟成されることで、旨味や風味が豊かな製品が生まれます。この時期に仕込まれたものは特に「寒仕込み」として評価が高いです。
まとめ
いかがでしたか? 大寒は、寒さがピークに達する一方で、春の足音も聞こえ始める時期です。厳しい寒さの中で見られる風物詩や行事を楽しみながら、自然の変化や伝統文化に触れてみてはいかがですか。